足立武志
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公認会計士、税理士、ファイナンシャル・プランナー(AFP)
株式会社マーケットチェカー取締役 1975年生まれ 神奈川県出身
一橋大学商学部経営学科卒業。資産運用に精通した公認会計士として、執筆活
動、セミナー講師等を通じ、個人投資家が資産運用で成功するために必要な知識や情
報の提供に努めている。主な著書に、『知識ゼロからの経営分析入門』(幻冬舎)ほか多数
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足立武志の「中長期投資家のための“超・実践的”ヒント集」
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「景気底打ち」は本当か? 06月29日
先日与謝野大臣が、日本の景気について事実上「底打ち」を宣言しました。確かにこれを裏付けるかのように、経済指標は上向きに転じるものが増加していますし、日経平均株価も3月安値からたった3ヶ月で1.5倍近くにまで上昇しました。
しかし、本当に日本の景気は底を打ったのでしょうか?トヨタのプリウスが記録的な販売台数となり、納車まで7か月待ち、トヨタは残業も復活・・・というニュースを聞くと、たしかに「景気は最悪期を脱した」と思いたくなりますが、はたして本当にそうなのでしょうか?
実際問題として、欧米の金融機関の不良債権問題は全く片付いていませんし、昨年までの世界的な好景気のけん引役であった、アメリカ人の借金漬けの過剰消費は今後期待できないでしょう。さらに、現在行われている、エコカー減税やエコポイントといった景気刺激策は、低迷した需要を喚起するために行われているものですが、これは「需要の先食い」にほかなりません。エコカー減税やエコポイントの景気刺激効果はいつまでも続くわけではありません。今年の夏のボーナスは激減が予想されており、消費者の財布のひもが固くなるのは明らかです。そんな状態で需要の先食いを行ってしまっているのですから、本当に警戒すべきはこれからなのです。
そもそも、政府が景気動向を判断するときは、誤りがないように、かなり慎重な判断がなされます。そのため、実際に景気後退入りや底打ちとなってからかなり後にやっと「景気後退宣言」や「景気底打ち宣言」がされるものです。たとえば、日本経済が景気後退局面に入ったことを政府が認めたのは2008年8月ですが、実際には2007年10月をピークにすでに景気後退入りしており、日経平均株価が高値をつけてからはすでに1年が経過した後でした。
このように、政府が景気動向を判断するタイミングは、遅くなって当然なのです。それなのに、3月に日経平均株価が7,000円まで下がってからたった3ヶ月しか経過していない時点での今回の「景気底打ち宣言」は非常に意図的なものを感じます。「自民党の政策により、株価も大きく上昇したし、景気も回復している」とアピールするための選挙対策なのかもしれません。
もちろん、将来を正確に予測することはできませんから、本当に景気はすでに底を打ち、株価も大きく上昇する可能性もあります。仮にそうなったら、損切りルールを厳守したうえで上昇の波に飛び乗ればよいだけです。しかし、2008年の9月〜10月に記録的な暴落に見舞われ、「100年に1度の危機」と言われている割には、景気が底打ちするのには早いような気がしてならないのは筆者だけでしょうか?
株価は未来を映す鏡です。2008年秋の暴落、これはその後世界経済がとんでもない事態に陥ることを予言しているように思えて仕方ありません。今回の景気底打ち宣言が本当だとしたら、確かにリーマン・ブラザーズの破たんなど大事件はあったものの、今までの景気後退局面と大して変わりません。なりふり構わぬ政府の景気刺激策の効果が切れた後、もうひと波乱、ふた波乱ある可能性は高いのではないでしょうか。
わたしたち個人投資家としては、今後の株価見通しや景気について強気発言が蔓延し、「買い」の誘惑に負けてしまいそうな今だからこそ、しっかりと脇をしめて、足元をすくわれないようにしておきたいものです。
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