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マンガ 不正会計の真実

マンガ 不正会計の真実
粉飾決算は終わらない

著者 脚本 清水昭男/作画 小川集
定価 本体648円+税
文庫判 約192頁
2008年7月9日発売
ISBN 978-4-7759-3057-1 C0133


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目次 | はじめに | 立ち読み(PDFファイル1.87M)

複雑な会計手法は「粉飾トリック」の隠れ蓑
真実を偽った監査法人の末路とは

会計監査とは、企業の依頼を受けてその会計を監査し、企業の実情が正確に反映されているかを確認することである。監査対象である企業は、同時に“クライアント”でもあるのだ。

主人公カースティンとアリスタは、アメリカの名門監査法人のひとつ、アーサー・アンダーセンに勤めている。彼らは担当企業と激論を交え、間違いを正し、誤魔化しを見抜き、順調に昇進していくが、やがて企業監査のはらむ矛盾に戸惑いはじめる。
“企業の会計報告を監査するとはいっても、その企業はクライアントでもある。強気に出れば、ほかの監査法人に乗り換えられるだけだ。しかし、虚偽に目をつぶることは、一般の投資家を裏切る行為になる――”

「依頼する監査法人はアンダーセンでなくともよい」と顧客につきつけられ、クライアントサービスと社会正義の狭間で苦しむカースティン。彼に対して同僚のアリスタは「企業会計は良心のサービスだ」と励ます。
しかし、大手エネルギー会社エンロンが、粉飾決算を背景に、アメリカ史上最大の負債を抱えて破綻。その監査をしていたアーサー・アンダーセンも当然のごとく罪に問われてしまう。
ますます会計監査という仕事に自信を失っていくカースティンを「見損なった」と突き放し、アリスタはアンダーセン・コンサルティング(現アクセンチュア)に転職。着実に自分の道を歩んでいく。

監査業務の矛盾は果たして改善されるのか――
そして、ふたりの道はふたたび交わるのか?――

※本書はパンローリングより刊行された『監査法人 アーサー・アンダーセン』を文庫収録にあたり加筆、再編集し、改題したものです。



■目次

はじめに
第1章 アンダーセンの終幕――監査法人の崩壊
     SOX法と株式市場

第2章 アーサーズの量産――監査業務の均一性
     アンダーセンとは

第3章 情報開示の良心――監査の役割
     監査の役割
第4章 解釈と表現方法の多様化――資産と利益
     資産と利益

第5章 本心との葛藤――会計監査のバランス感覚
     会計監査のバランス感覚

第6章 現実と仮想の境界線――積極的な会計手法
     積極的な会計手法

第7章 毒か薬か…――可能性を追求する時代の企業会計
     可能性を追求する時代の企業会計


著者紹介

原作:清水昭男
1983年、南イリノイ大学コミュニケーション学部卒。トウキョウ・フォレックス、タレット・アンド・トウキョウ・インターナショナルを経て、CBOTアジア・パシフィック代表を務める。その後、ブルームバーグ・ニュースのレポーターとして、CATVで相場レポートを担当。現在は、フリーで翻訳・執筆を中心に活動中。手がけた作品は『新マーケットの魔術師』『投資苑がわかる203問』『DVD ターナーの短期売買セミナー』『DVD ガースタインの銘柄スクリーニング法』『DVD デビッド・ナッサーのデイトレード講座』『DVD アラン・ファーレイの収益を拡大する「仕掛け」と「仕切り」の法則』『マンガ LTCM』『マンガ プーチン主義のロシア』『マンガ なぜ巨大企業はウソをついたのか』(パンローリング)など多数。

作画:小川集
1952年生まれ。長崎県出身。1971年県立大村工業高校機械科卒業。1975年川崎のぼるプロダクションでアシスタント。1981年独立。ゴルフや釣りなどの業界漫画を中心に、歴史学習漫画の単行本なども制作。広告用イラスト、カットなど幅広く手掛けている。2001年より宇都宮アート&スポーツ専門学校漫画コース講師。趣味の草野球では監督も務めるほか、自らも町内会のソフトボールチームに参加している。近著に『マンガ オプション売買入門の入門』『マンガ 決算書でわかる株式投資入門』(パンローリング)などがある。




はじめに

 投資やビジネスを動かすのに、夢や希望はもちろん大きな要素です。しかし、最も重要なのは“数字”です。数字は、新規のビジネスや投資であれば「目論見書」、既存のものであれば「決算書」のなかで、企業の夢や希望を経済的に支える構造として示されます。これらによって投資やビジネスは当事者の域を超えて、第三者を取り込んで拡大できるのです。
 そして当事者と第三者の間に介在するのが、アーサー・アンダーセンなどの監査法人です。数字そのものはウソをつきませんが、その数字を算出する過程で間違いがあれば、結局はウソになってしまうのです。ですから、監査法人は、正しい数字を算出するための“正しい根拠”や“解釈のルール”を企業の決算に徹底させます。
 それによって、不正確だったり、企業にとって一方的に都合の良い夢や希望は排除され、数字には一貫性が保たれるのです。数字が正確であることで、第三者は企業のリスクや将来性を把握することができ、さらに投資やビジネスの比較・検討が可能となります。つまり会社やファンドなど、当事者による数字や言葉以外に、こうした監査法人が間に入ることで「ウソをつかない数字」があり、夢や希望を描き出すことができるわけです。

 2000年代初め、あるケーブルテレビ局で相場レポートを担当していた私は、次から次へと発生する米企業の問題行動に圧倒されていました。例えば、コングロマリットであるタイコ・インターナショナルの幹部による企業の私物化であったり、新薬開発会社のイムクローンによるFDA(米食品医薬品局)への臨床検査の虚偽データ提出であったり、それはITバブルの残骸のなかに焼け残った自由経済の醜悪な息づかいの数々でした。
 そんななかで発覚したエンロンの粉飾決算は、それでもその大胆さと傍若無人さにおいて比較対象が見つからないほどの大ニュースでした。エンロンの粉飾決算に対してイメージを掴みかねていたほどです。しかしエンロンの崩壊に伴って解散の憂き目をみたアーサー・アンダーセンに対しては、発覚以前から個人的に近しいものを感じていました。なぜなら経済報道に関わっていた私は取材先として多くのアンダーセン関係者を知っており、イリノイ州の大学を卒業した私の同期にはアンダーセンに就職した者もいたからです。

 しかし、知っていたつもりのアンダーセンを、知人やニュースソースとしてではなく、会社組織として私が見直したのは、同社が崩壊した後のことでした。  私も一度、監査法人の仕事ぶりを目にしたことがあります。1990年代初め、仕事でニューヨークに会社を設立したときのことです。東京の親会社は、超一流の弁護士事務所と監査法人(アンダーセンではありませんでしたが)をコンサルタントに付け、私が現地のコーディネーターとして参加しました。
 その会社は、為替の取引システムとそのネットワーク営業を目的としており、営業開始間もない状況では顧客数も限定的で、既存のサービスをシステム化したものだったため料金設定も低価格でした。しかし、客先に設置する高価な機器を在庫として多く保持しており、新興企業としては破格の資産を計上していました。会計上は、満杯のダムの水をスプーンですくい出すような数字の流れでした。
 そして、ニューヨークの子会社にも最初の決算日が近づいてきます。設立段階でお世話になった監査法人に決算書の制作を依頼すると、高額の報酬見積もりが出され、東京の親会社からは「法外だ」として、協議しろとの指示を受けました。
 親会社が渋々納得する額に見積もりを落とした末、実際の決算業務のために監査法人から派遣されてきたのは、オペルさんという20歳代半ばの女性でした。彼女はその後、昼夜を問わず36時間ほどぶっ続けで事務所のマネジャーと連絡を取り、銀行の預金通帳や在庫管理表などの整合調査を行いました。さらにその後、作業コストを軽減するために、この監査法人を経て独立したというCPA(米国公認会計士)が作業に加わり、決算書作成は無事に終了したのです。
 私が覚えているのは、自分のファイル管理が欠陥だらけだったということと、食べ続けた中華とピザのデリバリーのメニューだけですが、とにかく彼らの勢いに圧倒された出来事でした。

 アンダーセンに就職した私の友人たちも、このようにそれぞれのキャリアをスタートさせたのだと思います。しかし、彼らの多くはそのすべてを失いました。 金銭的な安定感だけでなく、プロフェッショナルとしてのプライドや使命感といった彼らのエリートとしての裏付けは、それを支えていたアンダーセンというブランドとともに自由主義経済の藻屑と消えていったのです。

2008年7月 清水 昭男


関連書籍


『マンガ LTCM
巨大ヘッジファンド
崩壊の軌跡』

『マンガ なぜ巨大企業は
ウソをついたのか
エンロンが見せた虚像と実像』

『マンガ
プーチン主義のロシア』

『マンガ 決算書でわかる
株式投資入門録 』

『私は株で200万ドル儲けた』

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