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2018年5月発売
定価 本体1,800円+税
四六判 334頁
ISBN978-4-7759-7232-8 C2033
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本書の第1版が出版された2007年4月以降、ひとたび下落した株式市場が、その後、上昇を続けるなか、ボーグルの運用方針は投資家に成果をもたらし続けている。今回の記念すべき改訂版第10版では、データが更新され、新たな情報も盛り込まれた。また、ボーグルはアセットアロケーションと退職後の投資に関する2章を新たに設けたが、初版からの一貫した長期的視点に変わりはない。
インデックスファンドに特化したポートフォリオこそが、株式市場のリターンから公平な分け前を効率的かつ確実に獲得する唯一の投資戦略である。この戦略はウォーレン・バフェットも支持するもので、彼はボーグルについて次のように語っている。「アメリカの投資家にもっとも貢献した人物を称えるための像を建てるとしたら、ジョン・ボーグルが選ばれることは疑いのないことだ。ボーグルは数十年にわたり、コストの極めて安いインデックスファンドに投資するよう投資家たちに呼びかけてきた。そして、今日、何百万もの投資家たちに貯金するよりもはるかに大きなリターンを獲得できることを知らしめたことを知れば、彼も満足するであろう。ボーグルは彼らの英雄であり、そして私にとっても英雄なのだ」
この最新版でも、これまでの版と同様、将来の財政的基盤を構築するための堅実な戦略を提示している。
●個別株やファンドの選択、またはセクターローテーションに伴うリスクを避けながら、広く分散された低コストのポートフォリオを構築する
●流行や派手な売り込みに流されることなく、現実世界で有効なものに集中する
●向こう10年での株式のリターンに対する期待を合理的なものにするために、株式のリターンは3つの源泉(配当利回り、利益成長、市場によるバリュエーションの変化)からもたらされることを理解する
●長期的には事業の実態が市場の期待を凌駕することを認識する
●コストが積み上げるのを避けながら、複利というマジックを操る術を学ぶ
インデックス運用を行えば、居ながらにして市場が働いてくれるのであるが、夢中になって株式を売買することで、勝者のゲームを敗者のゲームとしてしまう投資家があまりに多い。本書は、財政的な将来を築くための堅実な手引書である。
「資産運用会社が語る魅惑の言葉に耳を傾けるくらいなら、大なれ小なれ、投資家たちはジョン・ボーグルの手になる本書を読むべきである」――ウォーレン・バフェット
「100年後、今の時代の投資家として歴史家が名を挙げるとしたら、二人だけであろう。ウォーレン・バフェットとジョン・ボーグルだ。では、彼らが推奨する2冊と言えば。バフェットのバイブルであるベンジャミン・グレアムの『賢明なる投資家』(パンローリング)と、ジョン・ボーグルの一連の著作だろう。このたび改訂された本書は不朽の名作であり、投資家はどのようすれば市場のリターンから公平な分け前を手にすることができるのかというボーグルの素晴らしい考えを伝えるものである」――スティーブ・ガルブレイス(キンドレッド・キャピタル執行社員)
「印刷機と言えば、グーテンベルグ。自動車と言えば、ヘンリー・フォード。英文学と言えば、シェイクスピア。ファイナンスと言えば、ジョン・ボーグルだ。本書には、IRA(個人退職年金)を持つ個人から、最大規模の年金、寄付基金の運用者まで、すべての人々の資産運用に革命をもたらしてきた彼の70年に及ぶ英知が凝縮されている。本書を読み、楽しみ、そして利益を手にしよう」――ウィリアム・J・バーンスタイン(『ザ・インベスターズ・マニフェスト』の著者)
「ジョン・ボーグルが著したこの1冊には、大いなる知恵が詰まっている。有益で、洞察力にあふれ、確固たる主張を持つ本書は、また正しくもある。ボーグルが説明するように、投資で失敗する道には、高価なアドバイスや投資商品、そしてそれらを買わせるための高価な広告が敷き詰められている。ボーグルが投資家に提唱する道筋はまったく異なるもので、成功を保証しているも同然である」――テッド・アロンソン(AJO創業者)
「ジョン・ボーグルは、孤独な偶像破壊者からロックスターのようなセレブリティへと見事にキャリアを積み重ねてきた。彼が生み出し、発展させたインデックスファンドは個人投資家のみならず機関投資家の世界をも一変させた。だが、インデックス運用を行うだけでは不十分である。インデックスファンドの合理性を支持する原理と、投資計画を効果的に実行する際に潜む落とし穴とを理解することが投資家として成功するには不可欠である。本書は、勝てるポートフォリオ戦略を実行するためのツールを提供するものである。さぁ、これを読んで、マーケットに勝とうではないか」――デビッド・F・スウェンセン(イエール大学CIO)
記念すべき第一〇版に向けての序文――勝者のゲームを敗者のゲームにしてはならない
第1章 寓話――ゴットロックス家の人々
第2章 根拠ある熱狂――株主の利益は企業の利益と一致しなければならない
第3章 企業に賭けろ――簡潔にして勝て、オッカムのカミソリを頼りにしろ
第4章 どうしてほとんどの投資家は勝者のゲームを敗者のゲームにしてしまうのか――簡単な計算という冷徹なルール
第5章 もっともコストの低いファンドに集中せよ――資産運用会社の取り分が増えれば、それだけ投資家が手にするものは減る
第6章 配当は投資家の最良の友なのか――だが、投資信託はあまりに多くの配当をかすめ取っている
第7章 大いなる幻想――うわぉー、投資信託が公表しているリターンを投資家が手にすることはめったにない第8章 税金もコストである――必要以上に国に支払うことはない
第9章 良き時代はもはや続かない――株式市場も債券市場もリターンが下がるという前提で計画を立てるのが賢明
第10章 長期的な勝者を選択する――針を探すな、枯れ草を買え
第11章 「平均回帰」――昨日の勝者は明日の敗者
第12章 ファンドを選ぶためにアドバイスを求めるのか――転ばぬ先の杖
第13章 簡潔さと倹約の王から利益を得る――株式市場に連動するコストの安い伝統的なインデックスファンドを保有せよ
第14章 債券ファンド――ここでも簡単な計算という冷徹なルールが支配する
第15章 ETF――トレーダーのおもちゃ?
第16章 インデックスファンドが市場に勝つことを保証する――新しいパラダイム
第17章 ベンジャミン・グレアムならインデックス運用をどう考えただろうか――バフェットはインデックスファンドを支持するグレア氏を支持している
第18章 アセットアロケーション その一 株と債券――投資を始めるとき、資産を積み上げるとき、そして引退するとき
第19章 アセットアロケーション その二――引退後の投資とあらかじめアセットアロケーションされているファンド
第20章 時間という試練に耐え得る投資アドバイス――ベンジャミン・フランクリンとのチャネリング
謝辞
実際、パフォーマンスの観点で言えば、アクティブファンドはインデックスファンドに対してまったく勝ち目はない。それゆえ、私の個人的な確定拠出年金(日本版四〇一k)でも、国内株式、海外株式、海外債券の三本のインデックスファンドだけを組み入れており、投資比率を固定してずっと放置してある。私はこれが投資信託を使う場合の最善の投資法だと確信しているし、これからもアクティブファンドに投資するつもりは一切ない。それでも、もし読者の方が本書の内容について半信半疑なら、自分にとって最適な投資手段をAI(人工知能)に判断させてみるとよい。年齢などのプロファイルによっても多少異なるが、間違いなく低コストのインデックスファンド数本からなるポートフォリオが推奨されるはずだ。
もっとも、日本の多くのアクティブファンドが提供している顧客価値の根幹は、そのパフォーマンスにあるのではなく、特殊なテーマに特化することによるストーリーの面白さや、双曲割引の効果を利用した高頻度分配によるエンターテインメント性にある。そして、通常そうしたギミックはパフォーマンスとトレードオフの関係にあるので、アクティブファンドのパフォーマンスがインデックスファンドに及ばないのはまったく当然のことなのである。
さて、米国ではインデックスファンドがアクティブファンドを駆逐する勢いなのに対し、日本では趣向を凝らしたアクティブファンドが量産され続けてきた。一方でパフォーマンスの再現性に対する関心は低く、インデックスファンドの存在が顧みられることはほとんどなかった。だが、若年層を中心としたパフォーマンス重視の投資家の出現によって、今後インデックスファンドは大手運用会社にイノベーションのジレンマをもたらす可能性がある。なぜなら、インデックス運用は彼らの主要顧客にとって価値が低いゆえにリソース投入がためらわれるのに対し、新興の運用会社にとっては容易に参入が可能だからである。このままでは、近未来における日本の投信業界の地図は、現在とはまったく異なったものになっているかもしれない。
2018年4月
長尾慎太郎