短期トレーディングの手法 第8回

―TD CLOPWINの検証と終値の条件―

 

中原 駿

 

 前回でTDCLOPWINのフォーメーションについてはほぼ理解いただけたと思うので、今回はTD CLOPWINの検証と、終値の条件(売りの条件として前日の終値が前々日の終値より低いこと、買いの条件として前日の終値が前前日の終値より高いこと)がどう作用するかを見てみよう。

 

まず検証結果から見ていただきたい。終値の条件をいれた場合と、入れない場合を載せてある。

 

終値の条件が無い場合

終値の条件を付けた場合

日経平均
総損益 35,704 総損益 23,918
総利益 58,391 総利益 43,728
総損失 -22,687 総損失 -19,810
総トレード 371 総トレード 301
勝ちトレード数 243 勝ちトレード数 177
負けトレード数 128 負けトレード数 124
勝率 65% 勝率 59%
最大損失 -1,353 最大損失 -611
最大勝ちトレード 1,462 最大勝ちトレード 1,462
勝ちトレードの平均利益 240 勝ちトレードの平均利益 247
負けトレードの平均損失 -177 負けトレードの平均損失 -160
買いトレードのみ 12,705 買いトレードのみ 10,855
売りトレードのみ 22,999 売りトレードのみ 13,063
ドル円相場
総損益 39.00 総損益 51.56
総利益 139.89 総利益 133.40
総損失 -100.89 総損失 -81.83
総トレード 331.00 総トレード 303.00
勝ちトレード数 179.00 勝ちトレード数 159.00
負けトレード数 152.00 負けトレード数 144.00
勝率 54% 勝率 52%
最大損失 -5.09 最大損失 -3.96
最大勝ちトレード 24.59 最大勝ちトレード 23.15
勝ちトレードの平均利益 0.78 勝ちトレードの平均利益 0.84
負けトレードの平均損失 -0.66 負けトレードの平均損失 -0.57
買いトレードのみ -5.09 買いトレードのみ 2.96
売りトレードのみ 24.59 売りトレードのみ 23.15
ソニー
総損益 4,250 総損益 1,460
総利益 10,570 総利益 6,730
総損失 -6,320 総損失 -5,270
総トレード 198 総トレード 155
勝ちトレード数 113 勝ちトレード数 89
負けトレード数 85 負けトレード数 66
勝率 57% 勝率 57%
最大損失 -300 最大損失 -300
最大勝ちトレード 640 最大勝ちトレード 400
勝ちトレードの平均利益 94 勝ちトレードの平均利益 76
負けトレードの平均損失 -74 負けトレードの平均損失 -80
買いトレードのみ 150 買いトレードのみ 120
売りトレードのみ 4,100 売りトレードのみ 1,340

 

 他の有効な短期パターン同様、TD CLOPWINも、売りサイド優位であることが伺える。終値の条件についてであるが、概して条件付けしない方が勝率・平均利益ともに高かった。あまりにも煩雑になるので省略するが、実証の結果例外は為替相場で、概してドローダウンの概念からは終値の条件を付けた方がよい。もっとも、基本的にはこのパターンは為替市場では有効でない(その意味ではTD CLOPとも通ずる)。あるいは東京のみ、ロンドン市場のみ、といったケースでは有効である可能性もあるが為替相場の参加者が実質3市場を通じてポジションを持つことを考えれば、非現実的であろう。為替相場については、TD CLOPWINとTD CLOPは忘れた方が良さそうである。さて、債券相場に関してはTD CLOP同様十分に使用に耐えるパターンで、特にここ2年程度のJGBには勝率70%というデマークのパターンの中で最も強力なものとなった。

 

JGB先物(中心限月)
総損益 6.46
総利益 10.67
総損失 (4.21)
総トレード 44
勝ちトレード数 31
負けトレード数 13
勝率 70%
最大損失 (0.77)
最大勝ちトレード 1.31
勝ちトレードの平均利益 0.34
負けトレードの平均損失 (0.32)
買いトレード 1.51
売りトレード 4.95

 

 さて終値の条件が変わる、ということはどういうことなのか、考えてみたい。

 

 TD CLOPWINの条件は「実体の孕み」であった。したがって、終値のフォーメーションは実体が孕むという中で

 

  1. 最初のバーの終値が低く、次のバーの終値が高い(陰線に対する陽線孕み)
  2. 最初のバーの終値が低く、次のバーの終値も低い(陰線に対する陰線孕み)
  3. 最初のバーの終値が高く、次のバーの終値が高い(陽線に対する陽線孕み)
  4. 最初のバーの終値が高く、次のバーの終値が低い(陽線に対する陰線孕み)

 

の4つのケースしかない。おのおの終値の位置を考えると

 

  1. 孕んだ方の終値の方が高い
  2. 孕んだ方の終値の方が高い
  3. 孕んだ方の終値の方が低い
  4. 孕んだ方の終値の方が低い

 

となる。したがって、孕みにおいては終値の位置を決定するのは事実上最初のバーの「実体」がどちらになるか次第なのである。そしてTD CLOPWINとは実は最初のバーに対する「逆バリ」フォーメーションに他ならない。終値の条件を付けることで排除されるトレードとは売りの場合@、Aであり、買いの場合、B,Cのケースである。

 具体的に例図しよう。

@陰線に対する陽線孕み        A陰線に対する陰線孕み

いずれも、TD CLOPWINでは「売れない」パターンとなるのだが、@のケースが下落する可能性は比較的高いと思われるし、Aのケースは酒田五法的には上伸の目があるとされるが、筆者の経験則的には上伸確率はあまり高くない。

 

B陽線の陽線孕み      C陽線に陰線が孕む

         

今度は「買えない」パターンとなるのだが、いかがだろうか。厳密には検証する必要があるが、少なくともこのケースを排除しなかった方が勝率が上がった、ということはいずれのケースも上昇する確率のあるパターンと言うことが出来るのである。(続く)