『マーケットのテクニカル秘録
――独自システム構築のために』
定価 本体 5,800円+税
A5判 上製本 384頁
2003年12月18日発売
ISBN4-7759-7025-9 C2033
著者 チャールズ・ルボー&デビッド・ルーカス
監修 長尾慎太郎
訳者 杉本裕之
チャールズ・ルボー
原書 |
本書を読めば、プロのトレーダーが世界中のさまざまな市場で使用している、洗練されたテクニカル指標の応用法が理解できる。段階を追って書かれているこのガイドは、ADX(アベレージ・ディレクショナル・インデックス)、RSI、ストキャスティックス、モメンタム、パラボリック・ストップ・ポイント、オシレーター、MACDなど、ほとんどの実用的なテクニカル指標について個別に実践のトレードに役立つ解説を施している。 読者は、有用かつ実践的な本書を、トレーディングを行うコンピュータースクリーンのそばに常備したくなるに違いない。経験豊かなトレーダーたちによって書かれた本書では、以下のような内容が展開されている。
■そのときの相場に最も関連が深いテクニカル指標の選択法、表示法、および正確な分析方法
■読者の必要に応じた売買システムの開発とシステムテストの方法
■大きな損失が生じないよう「事前に」問題点を発見する、売買システムのモニタリングに必要な実用的テクニック
■長年の売買経験からの知恵として得られた、コストを生み出すエラーや間違いを避ける方法に関する貴重なアドバイス
■デイトレーディングの方法やテクニックに関して12の個別売買戦略例を含め、ひとつの章をすべて使って詳述
コンピューターを利用した先物売買を行う者の必読書である本書には、これまでのシステムマニュアルが扱ってこなかった内容が取り上げられ、トレーダーとして成功したい者に必要なインフォメーションが、明解でターゲット絞った形で提供されている。
◎本書への賛辞本書は、これまでに出版された先物トレーディングに関する書籍として最も重要なものである。
自分が入手した情報をどうやったら効果的に活用できるかよく分からないというコンピューター・トレーダー諸氏にとって、本書はその活用法を、理解しやすく、また実行も簡単な形で例示することによって、『ギャップを埋める』役割を果たすものである。
自信を持ってお勧めする
――エドワード・D・ドブソン、トレーダーズプレス社長
◎チャールズ・ルボーの作成した売買システム「Serendipity」「Sidewinder」が、『究極のトレーディングガイド』でお馴染みのジョン・ヒルが運営するトレーディングシステムのテストと評価を行う業界最有力ニュースレター『フューチャーズ・トゥルース(Futures Truth)』に登録されています。
・監修者/長尾慎太郎
東京大学工学部原子力工学科卒。日米の銀行、投資顧問会社などを経て、現在は運用プログラムの開発を手掛ける。クオンツアプローチによるシステムトレードを専門とする。訳書に『魔術師リンダ・ラリーの短期売買入門』『タートルズの秘密』『新マーケットの魔術師』『マーケットの魔術師【株式編】』『デマークのチャート分析テクニック』(いずれもパンローリング刊、共訳)、監修に『ワイルダーのテクニカル分析入門』『ゲイリー・スミスの短期売買入門』『バーンスタインのデイトレード入門』『究極のトレーディングガイド』『投資苑2』『投資苑2 Q&A』『ワイルダーのアダムセオリー』(いずれもパンローリング刊)など多数。
・訳者/杉本裕之
早稲田大学文学部卒業。防衛庁翻訳・通訳官、米軍横田基地連絡官などを経て、その後は商品先物情報会社に勤務。1995〜97年ニューヨークでの取材活動・翻訳業務に携わる。訳書に『アームズ投資法』『ロスフックトレーディング』(パンローリング刊)。
序言 まえがき
イントロダクション
|
第3章 システムのテスト
第4章 デイトレーディング
イントロダクション 付録 テクニカル指標計算式 謝辞 |
パソコンの使用
本書の目的は、読者がパソコンと分析ソフトによって先物取引の売買意思決定を行う手助けをすることである。先物取引にとってパソコンは必需品ではないものの、使えれば大きな味方となる可能性があるものであり、現代のトレーダーならコンピューターを必携ツールと考える者がほとんどだろう。FM電波と通信衛星を使った取引所データ転送は素早く正確なうえ、コストも比較的低い。ハード、ソフトともさほど高価ではなく、毎年低価格化、高速化して、扱いもより簡単になっている。
コンピューターは、うまく使えば非常に大幅な時間の短縮を図れるが、使い方を間違えばひたすら時間を無駄にするだけという結果になる。コンピューターによってほぼ無限といっていいデータを即座に保存し、見直すこともできる。また、そのデータをあらゆる角度からみることが可能になるのだ。いくつもの先物市場からひとつを選び、長期間のチャートを表示して分析することができ、キーボードの操作ひとつで、つい今しがた行われた取引について1ティック単位の値動きを詳細に見ることができる。
好みの価格データを選び、あらゆる処理を加えることができる。チャートをよりなめらかに、あるいは急な曲線で描くことも、拡大し、あるいは縮小することも、着色し移動し、重ねることも、保存し消去することも思いのままだ。可能性はほとんど無限といっていいが、そのためにメリットだけでなく問題もある。求めるべきものは一体何なのか、そしてそれが見つかったということがどうやって分かるのか。読者は考えをまとめ、パソコンでトレーディングの本質を明らかにする手助けとして、本書を利用することができるだろう。
自分だけのシステム構築
本書の第1章「システムの構築」では、完全なトレーディングシステムのためにこれだけは必要だという最低限のフレームワークを提示する。自分のトレーディングプランは読者が各自で立てるべきものだが、本書は、読者が本質から外れないようにという意図を持っている。家を建てるときと同じで、トレーディングプランも自分の好みにぴったり合った形で組み立てるほうがいい。どちらの場合も、基本を間違えると取り返しのつかないことになりかねない。
筆者たちがニュースレター『テクニカル・トレーダーズ・ブレティン』を執筆するときは、投資家なら自分が売買する市場に関する綿密な計画を慎重に立てるべきだ、という信条を掲げている。つまり、自分がどんな性格で、どこまでリスクを取ることができるのかといったことをきちんと見据えた計画である。これはどんなに強調してもし過ぎることはない。大枚をはたいて購入したトレーディングシステムが既成のものであれば、トレーディング自体が成功していた場合でも、さほど日数がたたないうちに使わなくなってしまうのがオチである。なぜならシステムの設計者は、実際にトレーディングを行う人間が持っているのと同じ性格や好みを持っているわけではないからだ。
ユーザー自身が組み立てるシステムこそ、常に最も優れている。思うように売買し、成果を上げるために何が必要かを知っているのは、自分だけだからである。試みに以下の質問に答えてみてほしい。
●小幅な値動きのたびに売買したいのか、それとも長期的なトレーディングを狙うのか?
●翌日の戦略を練るために費やせる時間は、1日当たりどのくらいあるか?
●見込みを誤った場合、どこまでなら負け続ける余裕があるか?
●短期売買しようとした場合、トレーディングに十分な時間を取っても仕事に差し支えはないか? 差し支えがあった場合も、最小限の範囲で済むか?
トレーディングを甘くみるな
もうひとつ重要なのは、売買で利益を追求するためにどこまで努力を惜しまないでいられるか、ということである。ミスを犯さずに利益の上がるシステムを構築し、トレーディングを行うのはしんどい作業で、精神的なストレスとなることも多い。筆者たちが見るかぎり、それぞれの分野で長年かけてひとかどの実績を築いた人々は、先物売買を簡単な小遣い稼ぎか何かと思っている場合が多いようだ。しかし、実際にはこうした人の大多数が先物で失敗していることが、各種統計によって明らかになっている。ここではっきりさせておきたいのだが、先物トレーディングで儲けること、それもかなりの大金を得ることは十分可能だが、たやすく達成できるとは思わないことだ。成功しているトレーダーは、ほとんどが多くの時間と大変な努力を注いでいる。労を惜しむべきではない。
適切なツールを見つけよう
本書の「テクニカル研究」の章では、一般的なソフトを使って構築できる各種の指標を紹介していくことにする。多くの指標やテクニカルツールを、トレーディングシステムのフレームワーク内で応用する方法や場面について説明していこう。大工道具を使って家を建てる場合でも、どの作業にどの道具を使うのか知らなければ話にならない。説明や指導も受けずにのこぎりでクギを打とうとしたなら、のこぎりを役立たずな道具だと思ってしまうに違いない。これと同じことで、明確なトレンドを描いている相場でストキャスティックスを売買開始や手仕舞いのシグナルとして使おうとすれば、まったく役に立たない指標だという結論に達する可能性がある。
テクニカル研究の章では、各種のコンピューターによる分析ツールとその使用が有効なマーケットの種類について説明してある。ただ、筆者たちは数多くのテクニカル指標について分かりやすく詳述したつもりだが、利用できるすべてのツールをカバーするだけのスペースも、またその能力もなかったことをあらかじめ言っておきたい。
仕掛けの前に試せ
パソコンによって、トレーディングシステムの開発とテストは革命的に進歩した。1980年代半ばには、経験豊かなプログラマーでなければ、自分の気に入ったテクニカル手法やトレーディングシステムについて何かを試すこともままならなかった。自分でそれができない場合はだれかを雇うしかなく、時間もカネもかかったのである。現在でも自分でプログラムするトレーダーはいるが、もうその必要はなくなった。新型の既成ソフトならテストについて大幅に手間が省け、ごく普通のトレーダーでもほとんど考えつくかぎりのトレーディング戦略について、気が済むまでテストすることが可能なのだ。「システムトレーディング」の章ではいくつものテスト事例によって、テスト段階で可能なことと不可能なことを示し、テストが必ずしも万能ではないことを説明したいと思う。
デイトレーディングについて
最後の「デイトレーディング」は、激情が渦巻く短期売買の世界に魅せられたトレーダーのための章だ。一般的に、先物相場で成功するための原則はタイムフレームに関係なく応用できるものだが、デイトレーディング戦略だけは別物であり、往々にして長期売買の場合とは大きく異なる。本章で紹介する手法は、ほとんどが『テクニカル・トレーダーズ・ブレティン』の読者から寄せられたものである。デイトレーディングのシステムはどちらかというと主観的なものが多く、解釈の幅が大きいとも言える。本書では、できるかぎり誤解の余地を小さくするよう努力した。紹介したシステムの多くは実践で試したわけではないため、効果については何も言えない。だが、これまで見てきた長期売買戦略と共通する部分がひとつある。それは、売買する本人の経験と、システムの複雑さの間には直接的な関係がある、ということだ。意外に思うかもしれないが、経験豊かなトレーダーほどシンプルなシステムを使用しているのである。
すべてが分かるわけはない
すでに述べたように、本書にはスペースだけでなく、筆者たちの知識や経験という点でも限界がある。経験が不足している理由については明らかなものが多いが、なかにはなぜかよく分からないものもある。筆者たちは長年にわたって基本的には、先物価格やその相場パターンはほとんど構造化していないという前提を信じて売買してきた。市場の秩序を決定する枠組みがどこかに隠れているなどという事実は、ついに見つからなかったのだ。こうした考え方から、筆者たちはトレンドの有無を見極めたうえでトレンドの起点や終点となりうる水準を見つけるためのテクニカル指標の応用分析に集中することとした。われわれは、先物市場でいかなる手法を使おうと特定の価格や相場の転換点を正確に予想することなどできない、と考えているのだ。
逆に筆者たちができると考えているのは、進行中のトレンドを素早く発見し、転換点が来たら直ちにこれに乗じて大きな儲けを得ることである。本書のテクニカル分析は、トレンドの強度を見極めて測定したうえで、トレンドの転換点となりうる場面をできるかぎり早く見つけようとすることに心血を注いでいるのだ。これまでもそして現在も、テクニカル分析をするうえでの目標は先物市場で特定の相場水準を予想することでなく、実際の相場を正確に追いかけることにあるのだ。
筆者たちは市場の性質をこのように見てきたため、サイクルやウエーブ、占星術、フィボナッチレシオ、ギャン理論のアングルなどといった、市場に初めから秩序があると想定している手法には馴染みがない。確かに、そうした手法で利益が出た例も数多くある。そうした成功例に異議を唱えるつもりも、彼らが非常に大きな成功を収めたという事実を争うつもりもない。ただ、筆者たちは、こうした成功の理由について、日柄を特定したり予想したりする理論や手法が有効だったからというよりも、資金管理の技術が優れていたことやリスク管理がしっかりしていたからだろうとみている。
コンピューターの厄介な点として、過去データを分析してみると、ほとんどどのような水準についても繰り返しのパターンが発見できてしまうことが挙げられる。コンピューターであらゆる組み合わせの数字をいやになるほど分析していけば、先物価格にかぎらずランダムな数字を使ってもパターンやサイクル、ウエーブなどが繰り返し現れることになるだろう。大量のデータに十分な数の変数を適用したからといって、偶然は起きないという事実が示されているわけではない。つまり、こうしたパターンが現れる本当の理由や効果が市場に存在している、ということの証明にはならないのである。
仮に相場の背景に詳細なパターンや構造が隠れているとして、その事実を発見して相場で実践しようものなら、先物市場は直ちに崩壊するだろう。もし市場が秩序だったものであり、相場が何らかの知られざる力に支配されているとしたら、この規則や決定事項を破るトレーダーはけっして負けないということになってしまう。将来起きることを「知っている」トレーダーがいたとしたら、だれもそんなトレーダーとは勝負したいと思わないだろう。
本書で提示したいのは、市場はある程度までランダムで、そこに一定のトレンドが存在するという見方なのだ。また、一定の期間にわたり相関関係が見られることもある。ただでさえ議論の的となりがちなこの問題に、筆者たちの自説を付け加えようと考えているわけではない。そうではなくて、一般的な受けが非常によく有効性があるかのように見えるテクニカル理論などは、本書でのトレーディング方法としてカバーしていないことを説明しておきたいだけなのだ。デイトレーディングの戦略は別として、筆者たちが選択した指標でトレーディングを行う一方、本書では実際に使っているテクニカルツールに限定して取り上げ、現場での経験や観察結果と関連付けることとした。
実際の応用場面では、市場にあらかじめ秩序があると仮定する方法とそれほど大きな違いはない。最も大きな相違点を挙げるなら、筆者たちの方法は市場が「今後どうなるか」を予想するのではなく、「現在何が起きているのか」を測定し分析することに重点を置いていることだろう。ウエーブ、サイクルや占星術など、市場にあらかじめ秩序が存在しているとの仮定で利益を得て成功しているトレーダーの多くは、仮定の正さを確認する値動きがあるまで静観した経験があったり、そうした姿勢を原則としていたりする場合が多い。彼らの成功がこのような仮定や予想だけによるものだとしたら、何も仮定の正しさを確かめるまで待っている必要はないし、実際、コストがかかってしょうがないだろう。また、こうしたトレーダーたちの仕掛けと手仕舞いは、驚くほど筆者たちのそれとよく似ているのである。両者の大きな違いと言えば、彼らがあらかじめ相場の行き先を知る手がかりとして、市場を支配するサイクルやギャン理論のアングルに信頼を置くのに対し、筆者たちの分析は相場を正確に観察することで得られた結果であり、予想の入り込む余地はない。
占星術をはじめとする数々の予想も確かに当たることはある。だがそれは、何回も予想を繰り返していけば、だれでもたまには当たるというだけのことである。たまには当たる、という程度の予想を本書の売買手法として認めるわけにはいかないし、それで何かが証明されるわけでもない。実際、こうした予想を行う人々の公開記録を見てみると、確かに素晴らしい結果を出している場合があるが、彼らはなぜだか、利益を上げることができなかった予想の記録を公開していないものなのだ。あらかじめ市場に秩序があるとの仮定が正しいのであれば、彼らが負けるわけはないのだが。また、先物のトレーダーは惑星の運行に影響を受けているという指摘も目にすることがある。だが、市場にはまったく同数の買い手と売り手が存在するのに、どうやって惑星の動きが先物市場に影響を与えるというのだろうか。火星が(トレーダーBではなく)トレーダーAを選び、その位置によって影響を与えようと自分で決めるとでも言うのだろうか? 惑星の並び方ですべてのトレーダーが影響を受けるとするなら、全員が買いに回り、売り手がひとりもいないという事態にはならないのだろうか?
本来の目的は儲けること
先物取引はよくゲームに例えられるが、忘れないでほしいのは、このゲームの勝敗を決める尺度は儲けた金額だけだということだ。エリオット波動を見つけ、正確にその波動を数えることができたり、過去のサイクルの存在を正確に計ることができたからといって、ゲームに勝てるわけではない。このようなトレーダーたちは、何も手にすることができなかったのだ。過去の波動に番号を付けることに「成功」しても、それが利益を生み出すことはないのである。
確かに、先物取引のアプローチで何が正しく何が正しくない、ということは言えない。幸いなことに、トレーダーとしての私たちにとって、何が正しいのかは客観的な問題ではないのだ。実際、この世界についてはほとんどの真実が知られておらず、証明された事実となるとさらに少ないと言ってもいい。つまり、ここにはチャレンジの対象とチャンスがあるということだ。類書では初の試みになるが、本書で述べたこと(および、それに続くべき内容のほとんど)は、事実というよりも筆者たちの個人的意見とその結論で構成されていることを明言しておく。
本書で扱っているのは、市場で過去起きたことや、現在起きつつあることについて最良の分析法を発見する方法である。テクニカル分析が最も関心を持っているのは、現在の市場を慎重、詳細に調べて将来の利益に結びつけられるようにすることだろう。読者の求めているのが未来予測の方法なら、その答えは本書にも、またほかのどこでも見つからないだろう。
読者は、本書のテクニカル手法のみかけにだまされないようにしてほしい。それらは確かに必須ツールだが、それだけあれば成功できるというものではない。これらのツールで未来を予測するのは不可能だ。できるのは、読者を正しい方向へ導く手助けとなり、時にはこれで利益が上げられるという程度である。つまり、成功へつながる適切な指標の組合せを注意深く選ぶためのシステム、あるいはトレーディング計画とでも言うべきものである。本書で筆者たちが試みたのは、トレーディングシステムやテクニカル手法、システム検証、デイトレーディングなどに関する個々のアイデアや知識を読者に伝授することだ。読者にとって、これらが役に立つことを望む。
初心者お断り
本書には先物トレーディング初心者のため、考え方や専門用語に関するガイドラインを用意してある。ジャーゴン(難解な専門用語)を弄することのないように努めたが、やはり一部でこうした難しい言葉を使わないわけにはいかなかった。すべての読者が本書の内容を完全に理解していただければと願っている。
ただし、本書は主な読者として初心者を念頭に置いて書かかれたものではない。現在入手できる多くの類書は、経験の浅い読者にとってより適した内容になっている。だが、本書では「ロング」「ショート」「スプレッド」「ウィップソー」「トレンド」といった基本的な用語を逐一解説するようなことはしていない。本書は、より経験を積んだトレーダーのために書かれており、彼らの貴重な時間を基本用語の定義などで浪費したくはないと考えたのだ。
また、時間とスペースの節約のため、本文中の例は買い手の場合のみを示し、逐一、売り手はその逆であるということを書いたりしていない。特に記述していないかぎり、売りシグナルは本文中で示された買いシグナルの逆だと考えて間違いない。
読者よ、注意せよ
執筆に関してはできるかぎり正確を旨としたが、どうしようもなく常に間違いは避けられない。ここで間違いというのは誤植などのことではなく、技術的、手続的、場合によっては論理的な誤りのことである。先物トレーディングは科学ではなく、また、将来も科学になることはけっしてない。数年前まで常識だと思われていたことが、厳密なコンピューターテストによって修正され、考えや戦略の変更を迫られることも多い。本書取り上げた事例の大半は厳密なコンピューターテストを通過したものだが、そうでないものも多くある。現在はまだ研究途上であり、将来、考えや意見の変更をすることは十分ありうる。読者は、優れたトレーダーも時に誤りを犯すことは仕方ないということが分かるだろう。 本書は筆者たちによる最大限の努力の結晶であり、けっして「売らんかな」の姿勢や「人気が出ればいい」といった考えで書かれたものではない。実際、本書は、売買手法や信条に疑問を投げかけることで筆者の友人たちを攻撃しているとも言える。意見の食い違いこそ市場を市場たらしめているものである。本書で書かれたことこそが筆者たちの信条であり、トレーダーの皆さんが売買手法を改善し、より良い結果を出すための手助けとなることを目指したものである。
さて、話は飛ぶが本書の監修作業の合間に、私は海王丸に乗船する機会があった。この世界最速の大型帆船は外洋に出ると帆に風を受けて海上を疾走する。その姿は大変美しく、見るものは感銘を受けずにはおられない。その航海中に私たち研修生がマストに登る訓練があったが、当初私はそれを辞退しようと思った。秒速20メートル近い風のなか、波のうねりで上下に大きく揺れる帆船のマストに登るなどということが、極度の高所恐怖症の私にできるとは到底思えなかったのである。だが、若い商船高専の実習生たちが全員ためらいもなくマストに登るのを見て私は考えを変えた。だれもができることならば、自分にもできるだろうし、またやらねばならない。結果として私はマストに登ることができた。私はそこから見た素晴らしい光景を一生忘れることはないだろう。
もし、読者が現在はまだPCによる分析になじみがないとしても、ぜひ自分自身の手でさまざまな検証をやっていただきたい。幸いなことに今はPCもデータも分析に必要なものは何でも簡単に手に入る時代である。それはいまやだれもができること、だれもがやっていることであり、その過程は読者を、迷いや混乱から解放し、大きな失敗を回避させ、トレーダーとしての成長を助け、新しい世界へと導くことになるはずである。そして本書はそのための優れたガイドとなるだろう。
最後になったが、本書の翻訳にあたっては以下の方々に心から感謝の意を表したい。杉本裕之氏は本書にふさわしい、読みやすい翻訳を実現してくださった。そして阿部達郎氏にはいつもながら丁寧な編集・校正を行っていただいた。また、本書が出版される機会を得たのはパンローリング社社長の後藤康徳氏の熱意があればこそである。
長尾慎太郎
正しくは、
■監修者あとがき
本書はチャールズ・ルボーとデビッド・ルーカスの手による“Technical Traders Guide to Computer Analysis of the Futures Market”の邦訳である。この書籍の登場以降は、ファンダメンタル分析であれテクニカル分析であれ、資金運用にまつわるアイデアは、きちんとした統計的な観点からの考察を伴うデータの分析がない場合は、まっとうなものとはみなされないことになった。コンピューターによる精緻な検証によって、それまで本当に有効なのか、それとも見かけ倒しにすぎない空論なのか、曖昧として判然としなかった数々の主張は白日の下にさらされ、悪貨は徐々に駆逐されることになったのである。もちろん実際にはマーケットの参加者の立場は多様であって、それゆえに、ある運用手法が効くか否かという判断の閾値は主体によって各々異なるが、分析が正しく行われ、かつ結果が正確に解釈されることを前提で言えば、検証結果そのものは試験者の事情とは切り離された純粋に科学技術の問題であり、だれにとっても明快に理解できるものなのである。2003年11月
■ 正誤表
本書の誤りについて、訂正してお詫び申し上げます。
158ページの図表の中の
「4日と9日のクロスで利益確定」と「9日と18日のクロスで買い」の位置が入れ替わっています。
下の「4日と9日のクロスで利益確定」が「9日と18日のクロスで買い」に、
上の「9日と18日のクロスで買い」が「4日と9日のクロスで利益確定」です。
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