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『景気予測から始める株式投資入門』
〜個人投資家のためのトップダウンアプローチ〜
著者 村田雅志
ISBN4-7759-9007-1 C2033
A5判 上製本 240頁
定価 本体 3,300円+税
2003年12月20日発売
→おし込みはトレーダーズショップからどうぞ!!
UFJ総研エコノミストが書き下ろした
落とし物を探すときのことを思い出してほしい。おそらく、次のような動作を無意識のうちにしているはずだ。
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■目次
第1章 なぜ景気予測が必要か 第3章 マクロからセクターを選び出す 第4章 セクターから個別銘柄へ 第5章 景気予測に必要な経済統計 |
株式や債券などを扱う金融市場(マーケット)関係者は、景気予測に「マクロ」という言葉をよく使う。マクロ(macro)とはミクロ(micro)の対比語であり、本来の意味は「大きい」である。しかし株式や債券などを扱う金融市場(マーケット)関係者の間では、マクロは大きいという意味ではなく、マクロ経済学という意味になる。例えば、マーケット関係者の間で、「彼はマクロのことがよく分かっている」という意味は、「(彼は)マクロ経済学のことをよく理解している」となる。ただ、この場合の彼は、マクロ経済学という学問を理解しているという意味では良い評価を得ているともいえるが、実務ができるという意味は含まれていないので、下手をすれば「勉強はできるが投資(運用)はダメ」とか、「頭でっかちで実務は疎い」といった意味にもなってしまう。
ところが最近では、マクロの意味は、単なる学問の経済学からさらに変化し、「経済全体を巨視的に観察・理解する」に移り変わろうとしている。先の「彼はマクロのことがよく分かっている」は、「彼は巨視的な視点で経済全体を観察・理解している(もしくは観察・理解する方法を知っている)」という意味になる。最近では、この彼も良い評価を得ていることだろう。
(2)マクロの必要性
マーケット関係者の中でマクロの意味が変わりつつあるのは、投資活動において経済全体を巨視的に理解する必要性が増したためだろう。これまで株式投資では、各企業をひとつひとつ丹念に分析する手法(ボトムアップアプローチという)が主流だった。しかしバブル経済崩壊を経た90年代後半ころから、個別企業のことをどれだけ分析しても、以前のようなリターンを得られない状態が続いた。
例えば、1997年から98年の日経平均株価とマクロの経済活動をみてみよう。97年当初、日本経済では、消費税率引き上げを前に自動車、家電といった耐久財の買い替えブームが起きた。そして日経平均株価は、96年末に急落したものの、97年5月には2万円台を回復していた。しかしその後、日経平均株価は低下基調を続ける。結局、株価が底打ちを示したのは、99年1月のことである(図表1―1)。
この株価下落をマクロから考えてみよう。マクロ統計のひとつである鉱工業生産(経済産業省)をみると、鉱工業全体の出荷水準は、消費税率引き上げ前の97年3月まで上昇を続け、消費税率引き上げ時の4月にいったん低下するものの、その後は7月まで再び上昇している。この動きは、日経平均株価の動きと整合的である。
当時、消費税率が引き上げられたにもかかわらず出荷指数が持ち直したことから、日本経済はバブル崩壊の痛手から完全に回復したとの意見が強くなっていた。しかしこうした楽観的な意見の裏側で、日本経済は着実に不況への道を歩んでいく。
(後ほど詳しく述べるが)鉱工業生産では出荷指数と同時に在庫指数も発表される。在庫は、製品の売れ残り度合いを示すものであり、好況時には減少、不況時には増加する傾向がある。また在庫が積み上がると、企業は在庫処分をすすめるため、生産活動を抑制するとともに、値引き戦略を選択する傾向にある。こうした戦略は、企業収益を下押しし、不況を加速させる。
97年当初の鉱工業全体の在庫指数は、消費税率引き上げ直前の3月を底(ボトム)に急速に上昇している。出荷指数は、消費税率引き上げ後も上昇していたが、在庫指数が急上昇したことを踏まえると、日本経済は97年3月の時点で危険シグナルを灯しており、株価がピークを打つ7月時点では、日本経済はすでに不況に陥っていたといえる(図表1−2)。
さらに悪いことに、97年秋には大手金融機関の破綻が相次いだ。このため、消費者マインドは急速に萎縮し、出荷は低下を続け、在庫は過去最高水準にまで増加した。そして企業の売上高や利益は規模を問わず大きく減少する。当然ではあるが、株価は下落する。
こうした状況下では、株式投資のための個別企業同士の比較・分析は、ほとんど意味をなさない。なぜなら程度の差こそあれ、ほとんどすべての企業で利益が減少するからだ。これは、風速何十メートルもの逆風の中、100m競走をするようなもので、誰かが1着になっても、タイム自体は今までの記録と比較して大幅に遅くなる。マクロを理解していない投資家がやみくもに株式市場へ資金を投じマーケットインデックスに優る相対リターンを得たとしても、絶対リターンは大きなマイナスになるのと同じである。
猛烈な逆風が吹いているときは、追い風となるようなコースを選択してレースをするか、もしくは風が大人しくなるまでレースを休憩し、次のレースに備えるのが賢明である。マクロを理解している投資家が株式市場から資金を引き上げ、次の上昇局面を虎視眈々と狙っていたのと似ている。
投資活動でマクロを実践する、言い換えれば、投資活動の一環として経済活動を巨視的に理解するには、まず何をすべきだろうか。一言で示すと「視点を高くすること」である。では、「視点を高くする」とはどういうことか。ここではイメージを膨らませるために、将棋の例を考えてみる。将棋が大好きだが、あまり上手ではない初心者の例を想像してみよう。
将棋経験のある方はご存知かと思うが、将棋では初心者ほど将棋盤の一部分を凝視し、盤全体に目を向けない傾向がある。例えば将棋盤のある部分で駒の取り合いが始まると、初心者ほど駒の取り合い部分を見つめて思考を巡らす。そのうち、初心者の姿勢はいつの間にか前のめりとなり、ますます視線を一部分に集中させる。一方、上級者は、駒の取り合いが激しくなったとしても、視線を一部分に集中させることなく、常に将棋盤全体を見渡せる。
将棋の目的は、最終的に相手の王様を倒す(将棋用語では「詰める」という)ことである。上級者が将棋盤全体を見渡すのは、駒の取り合いの局面で自分の駒すべてが取られたとしても、最終目的が「王様を詰める」ことだと認識し、目的達成のために必要なゲーム展開を組み立てるためである。ところが、初心者はゲームの最終目的を忘れてしまい、できるだけ多くの駒を取ろうと、駒の取り合いに熱心に挑む。
こうした初心者のために贈られるアドバイスのひとつが「背筋を伸ばす」である。これは別に精神論を唱えているわけではない。前のめりになっている姿勢を改め、背筋を伸ばすことで目の位置を自然と高くし、嫌でも将棋盤全体が目に入るように仕向けるためである。初心者は、こうすることで半ば強制的に将棋盤全体を見渡せるようになる。初めのうちは視線を一点に集中させることが難しいため、もどかしい思いをするが、ゲーム数をこなしていくうちに将棋盤全体を見渡す重要性を理解するようになり、最終的には上級者へと近づいていく(図表1−3)。
(2)上から下をみる=トップダウン
投資において視点を高くすることは、将棋の場合と異なり意外に難しい。なぜなら、視点の対象となる経済活動は、将棋盤のようにすぐに見渡せるものではないし、将棋の駒のような物体が手に取れる形で存在するわけではないからだ。
だが難しいとはいえ、投資のために経済活動に対する視点を高くすることは重要だ。過去に成功した投資家たちは、この重要性をきちんと認識し、投資において視点を高くすることを「トップダウン」と称してきた。
トップダウンと聞くと、普通の人は、あまり良いイメージを抱かない。社長や部長が、何となく思いついた命令・指示を頭ごなしに出し、部下が渋々それに従う、もしくは、現場を知らないエリートが、机上で理論を組み立て、大衆庶民に理論通りの行動を強いる、といった図式を思い浮べる方が多い。
だがトップダウンとは、「俯瞰(ふかん)する」という意味、もう少しやさしくいえば「上から下をみる」こと。ビルの屋上から路上の風景をみること、飛行機の席上から海岸線を眺めること、子供がアリの行列を観察すること、これらすべてがトップダウンである。投資におけるトップダウンには、良い・悪いといった価値判断は含まれておらず、あくまで「上から下をみる」という意味しかない。
トップダウンには、「視点を高く持つ」という意味に加え、「下をみる」という意味が付け加わっている。将棋の場合、ゲーム対象が必ず将棋盤の上にあるため、あえて「下をみる」ことを強調する必要はない。しかし投資の場合、視線の先が必ずしも定まっているわけではない。本来は投資対象に向けられるべき視線が、リターンによって得られる金銭、その金銭が可能にする消費活動、消費後の生活などに移ってしまう投資家もいる。トップダウンとは、視点を高く持つだけでなく、同時に経済活動を分析対象とすることを明確に意識した言葉でもある。
(3)落し物をトップダウンで探す
我々は、無意識ではあるが、トップダウンをうまく活用することがある。例えば、100円玉を落とした場合を想像してみよう。我々はまず、立ったまま(目の位置を地面より高い位置に置いたまま)100円玉が落ちている場所を探す。次に、100円玉の場所が分かったら、その100円玉の場所の近くまで移動する。そして最後に、腰をかがめ100円玉を手で拾い上げる。この一連の動作は、「上から下をみる」という点で、まさにトップダウンといえる。
ところが、これが100円玉ではなく、コンタクトレンズを落とした場合、どうだろうか。じつは多くの人が、100円玉と違う探し方をする。時たま街中で見かける風景ではあるが、多くの方はコンタクトレンズを落とした途端に、地面を這いつくばるように腰をかがめ、地面を手で触りながらレンズを探そうとする。しかしこの方法は、次の点で非常に効率が悪い。
まず、腰をかがめた箇所にレンズが落ちているとは限らないことだ。コンタクトレンズは水分を多く含んでいる。このため、レンズは、地面に落ちる前に自分の顔もしくは衣服に付着している可能性が十分にある。またコンタクトレンズは非常に軽い。仮にレンズが顔等に付着せず地面に落ちたとしても、風に乗って自分の真下ではなく、やや離れた位置に落ちることもある。
あてもなく地面を次々と触りながらコンタクトレンズを探し出す方法にも問題がある。レンズは非常に脆く、手で触ったショックでレンズを傷めてしまうこともある。また地面の面積は、手の面積に比べて莫大だ。地面の面積を1平方メートルとしても、手の面積はせいぜい0.02平方メートルだから、地面すべてに手で触れようとしたら(1回触るごとに10秒かかるとして)約8分もかかってしまう。これでは非効率だ。
ではコンタクトレンズを探し出す最適な方法は何であろうか。これは100円玉と同様にトップダウンを用いる方法である。まずは、落としたと気づいた場所から動かずに、顔と衣服にレンズがないかを確認する。もしレンズがないと確認できたら、次に風向きからレンズが落ちていると思われる場所を予想し、その場所に移動する。場所に移動したら、地面を手で触らずに目でレンズの位置を確認する。そしてレンズを発見したら、手でレンズを拾い上げる。こうした一連の動作は、100円玉と同様に「上から下へ」という意味でトップダウンである(信じられないかもしれないが、この方法を使えば、落としたコンタクトレンズを短時間で探し出すことができる。是非お試しあれ)(図表1−4)。
(4)トップダウンの利点と欠点
トップダウンの最大の利点は高い効率性にある。「上から下をみる」ことで対象範囲は徐々に絞られる。範囲が狭くなればなるほど、対象に費やされる体力・能力の集中度は高くなる。この結果、必要となる時間も加速的に短くなり、時間がかからない分、体力や能力を次のステップに費やすことが可能となる。最終的には、目的達成の可能性も高まる(図表1−5)。
一方「初めから下をみる(ダウンオンリー)」の場合はどうだろうか。対象範囲がさほど大きくない場合は、トップダウンとダウンオンリーとの間に大きな差はないだろう。しかし対象範囲が広がれば広がるほど、ダウンオンリーが対象とする範囲もそれだけ拡大する。もちろん、目的が達成されるまで下を見続けることも理論的には可能だが、対象範囲が大きくなればなるほど、必要とする時間も比例的に大きくなる。人間の体力・能力には限界があるため、時間がたつにつれ、疲労が溜まり、空腹にもなるだろう。いずれ目的への執着心も薄れ、目的達成の可能性も低くなる。
トップダウンにも欠点はある。最大の欠点は、最初に行う上から下への視点が目的とまったく違う方向を向いてしまうと、その後のすべての作業が無駄になってしまう点だ。コンタクトンレズの例でいえば、顔や衣服を確認すべきところを背中や口の中を確認するケース、または風向きと逆方向に移動してレンズを探し出すケースが該当する。これではいくらトップダウンが効果的でもコンタクトレンズを見つけ出すことはできないだろう。 ただ最初のステップを間違えたとしても、トップダウンが効率的な手法であることに変わりはない。自分で最初の視点が間違っていることに気づけば、初めに戻って正しい視点で上から下を見て、作業を再開すれば良い。過ちを修正し、作業を改良することができる点もトップダウンの利点ともいえる。ダウンオンリーは目的が達成されるまで、ただひたすらに作業を続けるだけである。結果が出るか出ないかは、ある種の運やヤマカンに頼るだけである。
手元にないが地面のどこかに必ず落ちている100円玉(もしくはコンタクトレンズ)を拾い出す作業は、まだ分からないが必ず存在している有望銘柄を選び出す作業と本質は同じである。そして有望銘柄を探し出す手法も、100円玉の例と同様に2種類ある。ひとつはトップダウンアプローチと呼ばれるものであり、もうひとつはボトムアップアプローチと呼ばれている。
トップダウンアプローチとは、マクロの視点で景気のトレンド・方向性を予測し、予測した景気のもとで投資リターンが最大化するセクター(業種)を選び出し、最後に選び出したセクター内で最も高いパフォーマンスを示す個別銘柄を抽出するものである。作業の流れを簡単に図式化すれば、マクロ→セクター→個別銘柄となる(図表1−6)。
一方、ボトムアップアプローチとは、割安、成長性が高い等々と思われる個別銘柄をまず選び出し、その後、財務状態、事業性、投資家の人気度などから、自分の考えが正しいかをチェックし、投資対象先を決める方法である(図表1−6)。日本の個人投資家に馴染みがあるのは、ボトムアップアプローチのほうであろう。
米国では、どちらの手法もそれぞれメリット・デメリットがあるため、個人投資家であっても両方の手法を使えるようにすべきという風潮がある。しかし日本の場合、ボトムアップアプローチですら個人投資家の間で普及しているとは言い難く、トップダウンアプローチについては知らない投資家が多い。
(2)トップダウンアプローチの利点
ボトムアップアプローチの場合、分析対象に選び出した企業を分析した結果、結局は投資対象に適さない場合が多々ある。この場合、いくら分析に時間を費やしたとしても作業内容は投資活動に直接活用されない。
一方、トップダウンアプローチの場合、マクロ→セクター→個別銘柄、と徐々に分析対象を絞り込んでいくので、これまでの作業が無駄になることはない。複数の企業を分析する場合でも、セクター全体の内容や今後の方向性についてすでに分析済みであるため、追加作業は各企業の個別事情のみに限定される。
またトップダウンアプローチの利点として、分析に必要な情報が収集しやすいという点がある。ボトムアップアプローチの場合、分析にはPL(損益計算書)やBS(バランスシート、貸借対照表)といった財務諸表を用いることが多い。しかし各企業の財務諸表を収集する場合、大手書店で有価証券報告書を有料で購入する必要がある。もし無料で資料を収集したい場合には、各企業のホームページなどを通じて1社ずつ資料を集める作業が必要となる。また財務諸表に記されている内容は、会計に関する専門知識を必要とする場合が多く、財務諸表から有益な情報を抽出したり、企業の本質に迫る分析をするためには、ある程度の知識を有した投資家でないと難しいのが実情だ。
トップダウンアプローチの場合、マクロ分析に必要な経済データ(マクロ統計)は容易に収集できる。ほとんどのマクロ統計は、中央官庁といった公的機関で公表されているが、トップダウンアプローチに必要な経済統計を公表している機関は、内閣府、経済産業省、日本銀行など数が限られており、4000社程度あるといわれる日本の上場企業のデータをすべて収集することに比べれば、マクロ統計の入手に必要な手間は非常に小さい。しかもマクロ統計を収集するために必要なコストはほとんどゼロだ。
景気予測では、経済活動全体、言い換えれば景気の先行きを予測する。景気は家計や企業といった民間部門の活動によって上下するが、この他にも公共投資の積み増しといった財政政策、金利水準の変更といった金融政策、の2つの政策の影響も受ける。また米国やアジアといった諸外国の景気動向も日本の景気に影響を与える。これに加え、ドル円レート等の為替相場も輸出入や諸外国とのマネーフローを通じて景気に影響する。エコノミストと称する人間がこのような事柄を研究・分析し、投資家たちへコメントしている。彼らは新聞等のマスメディアに登場することも多いので、投資家ではない一般の人々でも彼らの意見を目や耳にすることがある。
一般的にいわれていることとして、景気予測のプロであるはずのエコノミストの予測精度は低く、予測内容がたびたび変更されるという指摘がある。確かに彼らのレポートをチェックするとわかるが、彼らの予測は(ひどいときには)毎月のように変更されることもある。このためか、人々の間では「景気予測は難しい」というイメージが定着しているらしい。
ところがエコノミスト予測の精度が低いといっても、トップダウンアプローチにはあまり支障がない。彼らの予測値は、小数点第一位まで議論の対象としているが、ここまで厳密に予測値を議論しても、トップダウンアプローチではあまり意味がない。後ほど詳しく述べるがトップダウンアプローチに必要な景気予測は、実質GDP成長率といった経済指標の数値を具体的に予測することではなく、あくまで経済活動全体(景気)の方向性を予測することにある。個人投資家は、エコノミストのように難しそうな議論を振り回すことなく、いくつかの基本的な経済統計データを表計算ソフト等でグラフ化し、基本的な分析手法を使って、データの先行きを思案すればよい。景気予測については、一般に思われているほどプロと(個人投資家などの)アマとの間に大きな格差はない。
セクター選択では、予測した景気の方向性をもとに、大きな投資リターンが見込まれるセクター(業種)を選び出す。景気は全業種の平均といえるものだが、じつは景気の方向性とセクターの方向性の関係は、すべてのセクターに共通しているわけではなく、むしろセクターによって大きく異なる。景気との連動性が強いセクターがある一方で、景気の動きとは逆の動きをするセクターもある。また中には、景気とは一見無関係な動きを示すセクターもある。セクター選択では、こうした各セクターの特徴を踏まえながら、今後有望と思われるセクターを選び出していく。
最後は個別企業の抽出である。選び出したセクターに属する企業群の中から高い投資リターンを示す企業を取り出す作業である。テクニカル分析のように、過去のセクターインデックスと株価を比較することで、セクターの動きに敏感に反応する企業を選び出す方法もある。またボトムアップアプローチで用いる手法も活用できる。
この段階では、個別企業を選び出す点で、トップダウンアプローチもボトムアップアプローチも大きな差はない。ただし、トップダウンアプローチの場合、(この段階では)すでに有望なセクターが特定化されているので、すでに選択したセクターを逸脱しなければ、大きな間違いを犯すことは少ない。投資活動に費やせる時間、労力、金銭といった個人投資家の実状に応じて個別企業の選び方を工夫すれば良い。
第1章 なぜ景気予測が必要か
1.マクロについて考える
1.景気の定義を考える
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第3章 マクロからセクターを選び出す
1.水泳のタイムと水流
1. 個別銘柄を選び出すには
1.経済統計の活用に必要な知識・技術 あとがき
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