もちろん、インターネットの普及によって、個人投資家でも本当に多くの情報を入手できるようになりました。その点では、機関投資家など、プロの投資家との差もほとんどなくなったと思いますが、その分、情報の賞味期限もどんどん短くなっていますから、何か材料が出てから動いているようでは、間に合わなくなってきているのです。
これからの時代は、材料が出るのを待つのではなく、一歩進んで「この先、どのような材料が出てくるのか」を予測し、先手を打って仕掛けることでしか勝てなくなっていくのではないでしょうか。
ひとつめは米国です。「米国(アメリカ)がくしゃみをすると日本は風邪を引く」という相場格言を、一度くらいは聞いたことがあると思います。日米の政治経済が強い関係にあること、それゆえにアメリカで何かが起こると、日本もその影響を受けることを揶揄する言葉です。ここで注目すべきは「米国が世界経済の中心である」という点です。
2つめは商品市場です。なぜなら、商品市場には、株式市場に先行して動くという特性があるからです。セクターによっては影響力も思った以上に大きくなります。つまり、「商品のファンダメンタルズの分析をすることで株式市場の流れを把握する」という意味では極めて有効なのです。
要するに、日本株に影響を与える「米国の商品情報」を見ておくと、その後で動く日本株を予見できるのです。
ひとつは、米国株式市場の方向感を示し、かつ、先行指標となる WTI原油価格の流れとその在庫の増減をベースに注目セクターを選び、次にその中から銘柄を選んでいく「トップダウン方式」です。
もうひとつは、米国で動いている商品に注目して、まずは関連セクターを選び、次に対応する銘柄を選んでいく「ボトムアップ方式」です。例えば、大豆価格が上がったら非鉄セクターに注目する」といったたぐいのやり方です。
目次
まえがき
1 少し視点を変えるだけで、ファンダメンタルズは役に立つ
2 商品への投資を有効に活用しないと、大きなチャンスを失う?
3 それなりの勉強は必要ですが、決して無駄にはなりません
第1部 米国商品情報編
第1章 ファンダメンタルズ・トレーディングとは何か
第1節 ファンダメンタルズは思ったほど難しいものではない
1)最終的には、需要と供給ですべてが決まる
2)ひとつの材料に対する反応は基本的にひとつ
3)短期間には、簡単に変わらない
第2節 個人投資家にファンダメンタルズ・トレーディングを勧める理由
1)テクニカル分析では、数をこなす必要がある
2)アノマリーは、終わってみるまでわからない
第3節 市場はファンダメンタルズそのものには反応しない
第4節 インターネットの発達で情報の賞味期限も短くなった 〜先取りの重要性〜
1)情報は一瞬で知れ渡る
2)先取りの重要性
第5節 テクニカル分析にも弱点はある
1)過去の成績は、将来の利益を保証するものではない
2)確率論として活用するのは有効だが、個人のレベルでは無理がある
第2章 ファンダメンタルズを使って相場に勝つポイント
第1節 相場を追いかけるのではなく、待ち伏せしよう
第2節 将来の動きを、毎回、必ず当てる必要はない
第3節 「タラ、レバ」の予想を常に心がけよう
第4節 どちらに動くのかではなく、どちらに動けば利益を出しやすいのかを考える
第5節 目立たない材料にこそ、チャンスが隠されている
第6節 トレードで後悔しないために必要なこと
1)参入のタイミングは、必要以上に気にしない
2)相場が動いたときには、すでにポジションを持っていること
3)常に再チャレンジできるだけの余裕を持っていよう
第7節 トレードの前に明確なシナリオを必ず用意する
第8節 メンタルをしっかりコントロールする方法 〜テクニカルを重視する〜
1)ポジションを持っている間は、冷静な判断はできないと考える
2)一度相場から撤退したら、再参入は一呼吸置いてから
第9節 絶対にやってはならない、3つのトレード
1)相場はあなたの価値観では動かない
2)「とっておき」の情報は、永遠に取っておくこと
3)売られ過ぎ、買われ過ぎという理由だけでは、トレードしない
第3章 商品市場別のファンダメンタルズ攻略法
第1節 原油市場の攻略法 〜季節性が出やすい相場〜
1)9月〜10月の傾向 〜需要の谷間で価格も低迷しやすいが、ハリケーンに注意〜
2)11月〜12月の傾向 〜暖房需要の増加観測が相場を下支え、OPEC総会にも注目〜
3)1月の傾向 〜在庫の積み増しをきっかけに手仕舞い売りが出やすい〜
4)2月〜3月の傾向 〜需要の低迷が続く中、相場は底値を摸索〜
5)4月〜5月の傾向 〜夏場のドライブシーズン到来を前に、ガソリン主導で上昇しやすい〜
6)6月〜7月の傾向 〜足元のガソリン消費の好調さが大きな鍵、株価にも反応しやすい〜
7)8月の傾向 〜バケーションで参加者も減少、相対的に動きも鈍くなる〜
第2節 金市場の攻略法 〜現物市場の需給バランスの影響を受けないことが基本〜
1)金利の動向には大きな影響を受けやすい
2)インドの宝飾品需要の増加で、相場は上がるのか
3)現物市場の需給は、やはり相場に反映されにくい
4)安全資産としての需要という、不安定でやっかいな材料
5)リスク・オフの動きで値動きは魅力的になるが、予測は困難に
6)インフレヘッジとしての金に対する需要は、復活するか
7)市場が何に注目しているのかを、見極めることが重要
第3節 コーン・大豆市場の攻略法 〜天候がすべてながらもタイミングは捉えやすい〜
1)3月の傾向 〜月末の作付意向調査に注目、新たな1年が始まる〜
2)4月〜5月半ばの傾向 〜生産地の天候や作付けの進捗状況を睨んで、一喜一憂の展開〜
3)5月後半〜6月後半の傾向 〜作付け作業が一段落し、売り圧力が強まることが多い〜
4)6月末〜7月半ばの傾向 〜夏の天候相場期に突入、天気予報に一喜一憂し乱高下〜
5)7月後半〜9月初めの傾向 〜受粉期が終了、生育状況を確認しながら落ち着きどころを探る〜
6)9月後半〜10月末の傾向 〜収穫が本格化する中、生産地の天候にも再び注目が集まる〜
7)11月〜12月の傾向 〜収穫期の売り一巡、需要動向次第では買い戻しが集まりやすい〜
8)1月〜2月の傾向 〜「2月の安値(February Low)」をつけるまでは、油断禁物〜
第4節 小麦市場の攻略法 〜コーンと同じ穀物ながら、ファンダメンタルズはまったく別物〜
1)米国の先物市場には、3種類の小麦が上場されている
2)10月半ば〜11月末の傾向 〜冬小麦の作付動向に加え、南半球の生育状況に注目が集まる〜
3)12月〜1月末の傾向 〜休眠期に入った冬小麦の畑に、十分な積雪があるのかが鍵に〜
4)2月〜3月半ば 〜生育の再開が近づく中、生産地の天候への注目も高まる〜
5)3月後半〜5月後半 〜休眠期明け生育状況に注目集まるが、コーンの動向にも注意〜
6)5月末〜7月後半の傾向 〜収穫期に入る中、生産者からの売り圧力が強まる〜
7)7月末〜10月半ばの傾向 〜収穫期の売りも一巡、輸出と春小麦の状況に注目が移る〜
第5節 天然ガス市場の攻略法 〜季節志向がはっきり出る相場、気温と在庫変動に注意〜
1)天然ガス市場の季節性向 〜暖房需要や冷房需要を先取りする形で相場が動く〜
2)11月〜12月半ばの傾向 〜在庫が取り崩し期に入る中、気温低下予報に対して意外に大きく反応〜
3)12月後半〜1月末の傾向 〜在庫の取り崩しが本格化、相場もそれにつれて大きく反応〜
4)2月〜3月前半の傾向 〜暖房需要がピークを過ぎる中、天気予報への反応もまちまちに〜
5)3月半ば〜4月末の傾向 〜需要の低迷期に入る中で軟調に推移も、戻り寒波に注意〜
6)5月初め〜6月半ばの傾向 〜冷房需要の増加が意識される中、在庫積み増しペースが鈍るかに注目〜
7)6月後半〜8月半ばの傾向 〜夏の暑さの最盛期、どれだけ気温が上昇するのかが鍵を握る〜
8)8月後半〜10月前半の傾向 〜冷房需要はピークが過ぎるも、ハリケーンの発生に注意〜
第4章 各市場で注目すべき材料とその分析方法
第1節 原油市場に影響を及ぼす材料
1)米国内の需給を把握するのに欠かせない石油在庫統計
2)エネルギー月報は、世界石油需要の変化とOPECへの石油需要に注目
3)稼働リグ数は、シェール・オイルの開発が進んで一躍有名に
4)経済指標は、先行性があり景気動向を直接反映するものに注目
第2節 金(ゴールド)市場に影響を及ぼす材料
1)現物需給のデータは、値動きに直接大きな影響を及ぼさない
2)中銀の金保有高の推移は、かつて大きく注目を集めたことも
3)金市場の材料はといえば、やはり経済指標
第3節 コーン・大豆・小麦市場に影響を及ぼす材料
1)米農務省(USDA)から発表されるデータは、材料の宝庫
2)週間輸出成約高(Weekly Export Sales)
3)週間輸出検証高(Weekly Export Inspection)
4)クロップ・プログレス(Weekly Crop Progress)
5)需給報告(World Agricultural Supply and Demand Estimates)
6)四半期在庫(Grain Stocks)
7)作付意向調査、作付け推定( Prospective Plantings, Acreage)
第4節 天然ガス市場に影響を及ぼす材料
1)週間天然ガス在庫統計 (Weekly Natural Gas Storage Report)
2)月間天然ガス生産統計 (Gross Withdrawals and Production)
3)掘削状況報告(Drilling Productivity Report)
4)各種天気予報
コラム:石油在庫統計の詳細について
重要コラム:私の情報収集法
第5章 実際にトレードをしてみよう
第1節 相場観をはっきりさせなければ、トレードは始まらない
第2節 相場の見通しを立てる前に確認すべき、3つのポイント
1)予想の基本は、現状把握から
2)足元の注目材料は、この先どうなるか
3)次に注目を集める、「金の卵」を発掘しよう
第3節 トレードの前には具体的なシナリオを必ず作る
第4節 時間を味方につけよう
第5節 オーダーを入れる前に、もう一度、自らの戦略を確認
第6節 リスク管理は、すべてのトレードの基本
1)少なくとも3〜4回は再チャレンジできる余裕を持つ
2)損切りポイントは、できるだけ遠くに置くように
3) 1回のトレードでの損失が、常に一定になるように調整する
第7節ボラティリティーの変化には、テクニカル指標を活用して対応する
第6章 すべての市場はつながっている
第1節 市場は思いもよらないところで影響を及ぼし合っている
1)金利が動くときは、大相場の始まり
2)ドル建ての国際商品市場は、ドル高に弱い
3)エタノール市場は、目立たないながらも影響が大きい
第2節 せっかちに見える市場でも、反応が遅いことは意外に多い
第3節 商品への投資を有効に活用しないと、大きなチャンスを失う
第2部 株式市場への活用編
第1章 米国の商品市場の情報を日本の株式投資に生かしましょう
第2章 商品市場を正しく理解することが、株式投資の勝率アップにつながる
第1節 全体の流れに付いていくことが、株式投資の勝率をアップさせる
1)為替について
2)金利について
第2節 覚えておくべき、商品市場の特徴と基礎知識
1)米国は今では立派な産油国
2)中国はコモディティ消費のトップの国
3)株式市場よりも商品市場のほうが先に動くケースが多い
4)商品は需給で動くことが多いため、大きなトレンドが出やすい
5)ある商品に関連する銘柄には、その商品と同様のトレンドが表れやすい
6)商品市場をチェックし、マーケットがどの材料に反応しているかを見る
第3章 日本株投資の基礎知識
第1節 日本の株式市場の特徴
1)相場は景気が良くても下落する・また景気が悪くても上昇する
2)日本株は海外要因で振らされやすい
3)株式市場はマクロにもミクロにも振らされる
4)業績が良くても、商品・債券・為替相場の流れに振らされる
第2節 東証一部銘柄を取引すること
第4章 トップダウン方式の銘柄選択
第1節 ステップ1 WTI原油価格で方向感をつかむ
第2節 ステップ2 毎週発表される原油在庫統計をチェック
1)パターン1:原油在庫減少&原油価格上昇
2)パターン2:原油在庫増加&原油価格下落
3)パターン3:原油在庫増加&原油価格上昇
4)パターン4:原油在庫減少&原油価格下落
第3節 ステップ3−1 注目するセクターを決める 〜基本パターン〜
1)パターン1:原油在庫減少&原油価格上昇
2)パターン2:原油在庫増加&原油価格下落
3)パターン3:原油在庫増加&原油価格上昇(2つのケースあり)
4)パターン4:原油在庫減少&原油価格下落(3つのケースあり)
第4節 ステップ3−2 注目するセクターを決める 〜プラスアルファパターン〜
1)パターン5:過去の平均在庫と比べて原油在庫減少
2)パターン6:過去の平均在庫と比べて原油在庫増加
コラム:目先の動き(在庫統計)に注目しつつも、その背景にある原油のアノマリーは重視する
第5章 ボトムアップ方式の銘柄選択
第1節 ボトムアップ方式とは
第2節 WTI原油価格の動向から注目するセクターを選ぶ
1)WTI原油価格が上昇している場合
2)WTI原油価格が下落している場
合
3)事例紹介 その1:資生堂
4)事例紹介 その2:JXTG
第3節 天然ガス価格の動向から注目するセクターを選ぶ
1)天然ガス価格が上昇した場合
2)天然ガス価格が下落した場合
3)事例紹介:大阪ガス
第4節 大豆価格の動向から注目するセクターを選ぶ
1)大豆価格が上昇した場合
2)大豆価格が下落した場合
3)事例紹介:キッコーマン
第5節 コーン価格の動向から注目するセクターを選ぶ
1)コーン価格が上昇した場合
2)コーン価格が下落した場合
3)事例紹介:フィード・ワン
第6節 金(ゴールド)価格の動向から注目するセクターを選ぶ
1)金利の低下により、逆相関として金が上昇している場合
2)金利が上昇している場合
3)安全資産として金(ゴールド)が上昇している場合
4)貴金属の需要増によって金価格が上昇する場合
5)事例紹介:アサヒホールディングス
第7節 小麦価格の動向から注目するセクターを選ぶ
1)小麦価格が上昇している場合
2)小麦価格が下落している場合
3)事例紹介:山崎製パン
コラム:豆知識
第6章 まとめ
第1節 時間軸(仕掛けのタイミング)の取り方
1)決算発表の内容を受け、株価が上昇するケース
2)決算発表の内容を受け、株価が下落するケース
第2節 最後に
巻末付録
情報源リスト 〜商品情報編〜
情報源リスト 〜経済指標編〜
おわりに
あとがき
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